『幸せな二度目のたんじょう日』

『幸せな二度目のたんじょう日』(Mさん(小学校4年生))

 ドクンドクン・・・心臓の音が大きくなった。あたまの中が真白になった。こわいっ。ぼくはハムスターの男の子。朝起きたら、なぜか人間の家のゆうびんポストの中にいたんだ。それだけならまだよかったのだけど、もっと運が悪いことに、お父ちゃんが一番こわいと言っていた人間というものに会ってしまったんだ。ああどうしよう。人間の手がこっちにのびてくる。にげたいのに、にげられない。まるで、かなしばりにかかったようなじょうたいだ。つかまれた。なにがおきるんだろう。人間がなにかを話している。どうなるんだろう。もう、その後はおぼえていない。
 あれ、気持ちいいふとんだ。ぼくの、じまんのベッドよりさらに気持ちいい。ここはどこだろう。そうだ、人間につかまったんだ。このようすだと死んではいないらしい。目をあけてみよう。どうなっているんだ?
「・・・!!」
 声にならない声がでた。おどろいた。どうしていたと思う?なんと人間が、すぐ目の前にいたんだ!!その人間が何かしゃべった。聞いてみると・・・。
「・・・!!」
 またまたびっくり。だって
「わたしソフィー。これからあなたは、わたしたちの家族よ。」
 って言ったんだ。ありえない。ぼくが人間の家族だって?ぼくは、おもいっきり首をよこにふってやった。すると、
「わぁ!それって、いいよの合図?かわいい。仲よくしようね。」
 って!!はぁ・・・。つたわらなかった。しかたがない。にげまわって、まいごになるよりはましだ。ぼくは、もう一度首をよこにふった。

 ソフィーの家族になって何日かたった。はじめは、本だなの上にのっておりられなくなったり、ソフィーにふまれたり、大へんだった。けれど、ソフィーのお母さんはお花やさんなので、お店で売っているヒマワリのたねをくれるし、最初に目覚めた時に気持ち良さにおどろいたペンポーチのふとんでゆっくりねむられる、うれしい毎日になったんだ。
 しかし、こまったことだって二つあった。一つ目は「そうじき」だ。大きい音がにがてなぼくは、月に2回かける「そうじき」がじごくなんだ。だから、ペンポーチの中でふるえながら「そうじき」が終わるのをまつんだ。二つ目は、ソフィーの姉「セーラ」だ。動物が大のにがてで、ぼくを見てはにげまわる。気がつよくてソフィーに「ハムスターをすてて!!」と毎日のように言うんだ。ぼくは、すごく悲しくてショックだった。ソフィーがあんなにおこられるようだったら、ぼくは出ていってソフィーが幸せになる方がうれしい。
 でも、ぼくには友達がいるんだ。それは、ときどきソフィーのお母さんのお店にやってくるハムスターのリースという女の子だ。話が合って、ものすごく仲よくなったんだ。しかもリースのかい主は名前はしらないけどソフィーの友達らしいから、たくさん会えるんだ。
 こんなふうに、こまったこともあるけど平和にくらしていた。ちなみに、ここまでの話でソフィーのお父さんがなぜ出てこないのか不思議に思った人もいるだろう。その理由は、ソフィーのお父さんはピアニストで世界中をまわっていて毎日いそがしく、なかなか会えないからなんだ。さびしいけれどソフィーやリース、ソフィーのお母さんがいるから平気さ。
 ある日うれしいことが起こった。セーラがぼくを見てもさけばなくなったんだ。ソフィーから
「ハムちゃんと仲よくしてあげて!!家族でしょ?」
と言われて、ぼくをかんさつしてみたら、かわいく見えてきたらしい。それは、ぼくにとってすごくうれしいことだった。

 さらに、べつの日に楽しいことが起こった。ぼくの「たんじょう日」ができたんだ。それは、せいかくに言うと、ぼくがこの家に来た日なんだけど。その日にぼくは、たくさんのプレゼントをもらった。ソフィーからは、フワフワのペンポーチ。これは二つ目のベッドだ。ソフィーのお母さんからは、とくべつなすごくおいしいヒマワリのたね。お父さんはピアノで「スティリアの女」という曲をえんそうしてくれた。そして、なんと、セーラはぼくにヒマワリのたねの形をしたおもちゃをくれたんだ。ぼくは、とてもおどろきうれしかった。セーラとの心のきょりが、ぐっとちぢまった気がした。
 それからは、セーラともソフィーやリースと同じくらい仲よくなった。一緒にお庭であそんだり同じふとんでねむったり、毎日(「そうじき」をかける日いがいは)とっても楽しくなった。
 もしどこかで朝も昼も夜も楽しそうな笑い声がする家を見つけたらおぼえておいて。きっとそこが、ぼくたちの家だから。ぼくたちの家は今日もたくさんの笑い声がひびいている。

 ところで読者の方だけにお伝えしますが、なぜハムちゃんがポストに入っていたかというと、ある夜に、ねぼけながらチーズのにおいにつられて入ったところがソフィーの家のポストの中だったのです。なぜチーズがおいてあったのかは、あなたのそうぞうにおまかせします。もしかしたら、ソフィーがさびしくないようにとソフィーのお父さんがおいたのかもしれませんよ。

 

※作品のコピー・無断転載を禁止します

【講評】

 Mさんはプライマリーから通っている生徒さんで、一旦本を読み始めると声を掛けるまで集中しています。要約などで学年以上の力を発揮できるも、その豊富な読書量の裏付けがあってこそです。
 さて、本作品は、テキスト『ファンタジーはこうつくる』を使用した物語作りを「面白そう」と興味を示してくれたことが始まりでした。テキストを参考にして、直ぐにハムスターを主人公にした、パディンドン型ストーリーにする事が決まりました。続いての設定を考える過程では、ハムスターの大きさを決めるために自分の手のひらを物差しで測ったり、登場人物達の名前を決めるために植物図鑑をじっくり眺めたり、楽しそうに自分が納得できる形を追及していた様子が印象に残っています。



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