第15回哲学教室の報告

10月19日(日)恵比寿教室新フロアにおいて第15回哲学教室を行いました。

今回は「不幸との向き合い方」というテーマを設け、〈不慮の事故や自然災害など、誰のせいにもしようのない不幸に見舞われ、人生で最も大切なものが失われたたとき、その不幸をどのように受け止めるべきか〉という問題を考えてもらい、生徒それぞれの意見を書いてもらいました。

哲学教室は毎回、国語専科教室が普段の授業で生徒たちに学ばせている「考える12の道具」を実践する場として位置づけています。
今回の哲学教室では、与えられた問題に対する考えを深めるにあたって、生徒たちにはこの「12の道具」の中の2つ、「言いかえる」「逆にする」を使ってもらいました。
具体的にいえば、まず「人生で最も大切なもの」をさまざまな表現に言いかえ、それに対するイメージを豊かにさせます(「言いかえる」)。また「不幸をどのように受け止めるべきか」という問いかけを逆転させ「どのように不幸を受け止めるのはよくないか」という方向性で考えていくようにするのです(「逆にする」)。このように与えられた問題を多角的な視点からとらえなおすことで、はじめは漠然としか考えられなかった問題の輪郭がはっきりし、自分のテーマが見出せるようになり意見が構築しやすくなります。

今回は「人生で最も大切なものが失われる不幸をどう受け止めるべきか」という問いについて考えてもらったわけですが、こうした問いは特に、まだ若く、実体験からは縁遠い中高生にとっては難しく、具体的なところまで考えが及ばないようなものであるでしょう。この問い自体に真正面から答えを与えることは至難の業になります。ともすると、内実の欠けた、どこか他人行儀で安直な回答しか与えられないということにもなりかねません。
たとえば、今回参加した生徒の一人ははじめ、単に「ポジティブに受けとめるべきだと思う」という意見を述べていました。しかし、「ポジティブに」とは具体的にどういうことなのかということは明確にイメージできていませんでした。

しかし、今回使った「言いかえる」や「逆にする」といった、考えるための道具立てを用いることによって、さまざまな視点を生徒みずからが切り拓いていくことができるようになり、問題をぐっと自分の近くに引き寄せ、充実した回答を与えることができるようになります。「ポジティブに受けとめるべきだ」という意見を述べた生徒は、「逆にする」の発想で、「好ましくないネガティブな受け止め方はどんなものか」を考えました。

  • その不幸の原因を自分のせいにする
  • もう生きていけないと自暴自棄になる
  • ギャンブルや麻薬といった退廃的なものに手を出して喪失感を埋めようとする

といったことを彼は挙げていました。
そして、そのような状態に陥ってしまわないようにするための心のあり方として彼が考えたのは、

  • 失ったものへの思いをひきずらないように、そのことを考えすぎず、新しいことにチャレンジするという姿勢を持つことが大事だ。

というものです。「好ましくない受け止め方」をはっきりとつかんだため、反対に、元々の問いであった「どのように受け止めるべきか」の内実が具体的にイメージできてきたのです。
つまり、はじめは単に「ポジティブに」としか言い表せていなかったものが、「新しいことにチャレンジする」という具体性を帯びて彼の中に見えてきたということです。なぜ「新しいことにチャレンジする」のが良いかという根拠も彼は提示してくれました。彼によれば、その新しくはじめたことが、失ってしまったことにとって代わってまた新たな支えになる可能性があるし、また生活の中に変化を与えることによって喪失感を抱いたままの精神状態から脱却できるということです。

このように、「考える12の道具」は、与えられた問題の輪郭や自分の思考過程をはっきりさせることに役立ちます。
ただし、今回の生徒の事例でも、「新しいことにチャレンジするべきだ」という結論に、もっともっと踏み込んで、確固たる論理によって裏付けされたものにする余地はあるでしょう。たとえば、「新しいもの」として見出してしまうものがギャンブルや麻薬のように退廃的なものになってしまう可能性があります。そうなってしまわないためにはどうすれば良いでしょうか。
時間の制限のなかで、こうしたさらなる問題に踏み込めさせられなかったのは残念ですが、ここからまたさらに「考える12の道具」を使っていくことで、この生徒の考えはさらに充実し、確固としたものになっていくでしょう。

次回哲学教室は11月16日(日)16:30~18:00の予定です。
多くの方のご参加をお待ちしております。



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