2014年度夏の体験教室受講生の作品紹介


 夏の体験教室には、一時帰国された海外在住の日本人の生徒さんが多数参加されます。日ごろ、現地校やインターナショナルスクールに通っているため、夏休みの期間だけでも日本語を強化したいというご要望があるからです。
 なかには、毎年のように夏の体験教室に、イギリスから参加してくださる高校生がいらっしゃいます。そういう生徒さんには、より国際的な内容の授業を受けてもらいたいと考え、「日米の小学校の歴史教科書の比較―太平洋戦争の記述について」というテーマで、実際の日米の小学生用歴史教科書を読み比べ、比較作文に取り組んでもらいました。


「日米の歴史教科書を比べて―第二次世界大戦を中心に―」  W.Kさん(高1)

 この先、我々は戦争をなくしていかなければならないと思う。なぜなら、戦争は大きな被害をもたらすからである。実際に日本も第二次世界大戦で敗戦国となり、ひどいダメージを負った。そのことを我々が最初に教わったのは、小学校での歴史の授業だったことを記憶している。つまり、戦争についての価値観の方向性を支配しているのは、小学校の歴史の教科書ということになる。だから歴史の教科書では、見解が偏らず、事実がしっかりと伝わるような記述を目指すべきである。
 アメリカの小学生が使う歴史の教科書をご存知だろうか。語り口は情緒的で、まるで読み物のようである。情報量も多く、世界の動きを広く捉えたものとなっている。戦争がいかにして起こり、どのように拡大していき、またどのように収束していったのか、非常に詳しく書いてある。これらをすべて勉強すれば、どのようすれば同じ過ちを繰り返さずに済むかということがよくわかるようになっている。
 しかし、不十分な点もある。アメリカの教科書には「こんな戦争をもう繰り返すまい」といった主張がどこにもないのだ。このような歴史を教わって育った子どもたちが大人になったとき、戦争が悲惨なものだと思わず、再び戦争を始めるかも知れない。
 それに比べて日本の教科書は、核兵器によって被害を受けた広島の街の写真を大きく表示するなど、戦争の悲痛さを訴えるメッセージがあらゆるところに散りばめられている。
 ただ、その一方で情報量は非常に少なく、終戦と戦後の繋がりは無に等しい。原爆投下後の写真に始まり、次は開戦の理由が続き、疎開した子どもたちや東京大空襲、原子爆弾の投下と終戦へと話が移っていく。そして、次のページからは東京オリンピックの写真……。つまり、時間的な流れというものがあまりにも軽視されているがために、何がどのような経緯で起こったのかがわからないのである。このような教科書で歴史を学んだ小学生たちは、それぞれのなかに戦争を二度としないという意志こそ芽生えさせるが、その手段がわからずに困惑してしまうだろう。それでは教科書に込められたメッセージも意味をなさない。
 だから、小学校の歴史教科書に求められることは、事実を偏りなく、時間軸に沿いながら広く情勢を捉えること、そして、各々の国が戦争で負った犠牲も忘れることのないように、戦争を二度と起こすまいとするメッセージを乗せて伝えようとする姿勢を示すことである。

【講評】
 Kさんは一昨年に引き続き2回目の受講となります。今回は、さまざまな視点から日米の歴史教科書の比較に取り組んでもらいました。
 まずは、ワークショップシートに事実や考えを書き込んでもらいました。それをもとに構成を練り、作文を仕上げていきました。
 Kさんは持ち前の鋭い観察力を発揮し、2つの教科書における第二次世界大戦の記述をめぐって、そこに見え隠れするテーマに迫ってくれました。そのなかでKさんがやや苦手としているのが文章の構成でした。そこで、私から構成の例を示したところ、流れるようにペンが進み、この比較作文を完成させてくれました。

国語専科教室講師:吉田敬



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