「読書感想文について」の国語専科教室のスタンス

2014/07/01 工藤順一

———————アビールとスローガン
  • 読書はあくまでも楽しみでするものであり、読書には「読まない」という自由もあります。強制はつつしむべきです。
  • 感想文についても、もういいかげん、感性や感情、画一的なものの見方のおしつけや、評価を気にしておもねるような嘘作文を書かせるのはやめよう。
  • 「読書感想文を書く」という前提そのものから考え直してみよう。

1、感想と意見は180度も違います。

もう十年以上も前の話になりますが、いまは退職なさった講談社現代新書のTという編集者に私は尋ねられました。それによると、アメリカの大学に留学しているその方の娘さんが何かを大学で発表すると、いつも教授に「それは感想でしかない、あなたの意見を述べなさい」と言われて困っているのだそうです。そして、「感想と意見はどう違うのか」と問うのである。おそらくその娘さんは日本では成績優秀であり、英語も堪能であったに違いありません。ここには、英語ができるとかできないということ以外の「言語文化の問題・言語教育の問題」が横たわっています。

2冊目の講談社現代新書となった拙著『論理に強い子どもを育てる』は、その彼の問いにも、私なりに実践的に応えたつもりの本です。

結論を言うなら、この本の176ページには、小見出しで「感想文と意見文の違い」とあり、次のように書いています。

「では、———感想文と意見文の違いはどこにあるのでしょうか。
まず、意見文は対象に対する賛成か反対か判断留保かという自分の態度を、自己責任のもとで選択するという、まさしくロゴスの行使といっていいものがはじめにあります。そして、その後に、その判断について論理を駆使して相手を説得するわけです。それは自分から世界に向かっての発信であり発言なのです。期待されていることは、論理的な説得力です。

それに対して、感想文はまったく逆のベクトルをもつています。まず、主体が自分ではなく対象となるもの、——つまり教科書であったり、本であったり、活動であったりしますが、———にあり、自分はあくまでも受け身的で、それをいかに受け止めたのかということになります。そこに期待されていることは、いかに正しくそしてプラス志向で与えられた対象を従順に受け止めているかということです。」

早い話が、意見とは発信であり、それに対して感想とは受信であるということです。

クリティカル・シンキングの重要なメソッドに「前提そのものを疑う」というのがあります。これは、とりわけ、受容と受信を大切にする日本人には難しいメソッドです。その「前提そのものを疑う」を読書感想文に適用させて考えるならば、一冊の本を、ただ疑うこともなくやみくもに受容・受信するだけの態度と、その本について「前提を疑い」自分の意見を発信する態度は180度違ってきます。そして、一冊の本についていうならば、著者はどういう思想を持つ人でどういう本をこれまで書いているかとか、出版社はどういう出版社であるのかとか、一冊の本のさまざまの前提がここでは疑われなければなりません。言葉を変えて言うならば、メディア・リテラシーと言ってもよい。

2、読書感想文の弊害について

読書感想文に関しては以前から、次のような弊害が指摘されて長いのですが、いっこうに変わる様子はありません。

1、 感想文を書かなければならないから生徒は読書が嫌いになる。

2、 毎年、面白くもない新刊の課題図書が業者との癒着を背景に指定され、ほんとうは面白くないのに、それを読んで「感動」し「感想」を書かなければならない。嘘をつかなければならない。

3、 毎年、青少年読書感想文コンクールなどという得体のしれないものがあり、課題図書ともつながっていて、ある特定の価値観の反映された感性のおしつけ教育・洗脳が横行している。

4、 その書き方とか、評価の基準も明確に示されない。たとえば、「あらすじ」を書くようにという教師もいれば、書いてはいけないという教師もいる。

5、 読書感想文を、入賞狙いとか、教師の受け狙いで書かせる代行業者が横行している。書いているだけで気がめいってくるような事態なのですが、読書感想文に限らず、文章とは本来は書きたくてやむにやまれず書くものです。もちろん、そこには読書をしての感動があったり、その本の主題に対する自分の意見の発信があったりするという、本来的には極めて積極的で有意義なことです。

3、国語専科教室での読書感想文の取り組み

毎年、教室に持ち込まれる「読書感想文」に私は長い間、悩みました。そして、以上のような弊害を乗り越えてマイナスをプラスに転じる次のような三つの方策を考えだしました。

1、 感想を意見に変える
ただ受容するだけではなく、それを他者にすすめる、つまり推薦する文章を書く。そのことで自分の意見を論理的に(三角ロジックをつかって)発信する文章になるはず。

2、 メディア・リテラシーを発揮させる
その本の作者や他の作品について調べさせる。

3、 「あらすじ」は必要なものです。岡田淳という作家が、国語専科教室の講演会で述べた次のようなことが非常に参考になります。子どもたちが著者である彼のところに感想文を書いてくるときに、同じ本でも、子どもによって「あらすじ」で書くところが異なっている。つまり同じ本でも受けとめるところが人によって異なっているのだから、「あらすじ」は必要だというのです。

 

なお、これは、小学館の教師対象の雑誌『小三教育技術2010年の7/8月号』に発表されたものです。また、『小三教育技術増刊 授業のアイディアとプリント3年 2012年 10月号』(小学館)にも再掲載されました。



夏の読書感想文コース

夏の読書感想文コース
夏の読書感想文コース(2016年/関東)
  読書感想文コース 小学3年生以上(黙読ができる)対象/13:00~14:30(90分) 当教室のオリジナルテキストを使用し、4日間の授業を通して感想文を完成させます。夏休みの宿題対策にも作文力の向上にもお役 ...続きを読む »
dokusho
『書きこむだけで読書感想文がすらすら書ける』発売のお知らせ
4月30日、当教室が作った読書感想文のためのテキスト、『書きこむだけで読書感想文がすらすら書ける』が発売されました。 書店やオンライショップで購入できますので、ぜひともお手に取っていただければ幸いです。 (以下の画像をク ...続きを読む »
kansobun_sumb
読書感想文をサポートするテキストのご紹介
読書感想文に役立つテキストをご紹介します 当教室が夏休みに開催する読書感想文コースは、今年度も大変ご好評をいただいており、早くもお席の残りもわずかとなってきております。 ここでは国語専科教室代表の工藤順一が監修した、読書 ...続きを読む »
Copyright © 工藤順一 国語専科教室 2017 | base design criated by Ani World.