実験を行う上で重要なこと(Sくん・高校2年生)

「実験を行う上で重要なこと」

ちくま評論入門 「ふたつの誤り」福岡伸一 を読んで(Sくん・高校2年生)

 私はこの文章を読んで、実験を行うときは仮説にとらわれず、実験結果だけに注目して次の実験を行うべきだと思った。なぜなら、仮説を強く思いながら実験を行うと、結果が仮説と同じにならなかったときに無理矢理、結果が仮説と同じになるように実験を進めていってしまうからである。また、そのように実験を進めていってしまうと本来の実験結果とは異なったものになっていってしまい、成功する可能性が低くなってしまうだけでなく、資金や時間も多く費やしてしまうことになるからだ。しかし、仮説は実験の見通しとなるので実験を行う前には必要である。

 私は学校の部活でダイヤモンドダストという珍しい気象現象を再現する実験を行ったことがある。ダイヤモンドダストとは、空気中にある水が急激に冷やされて氷の粒となり、それが太陽の光に当たってダイヤモンドのように輝いて見える光学現象のことである。自然界においては、冬の激しい寒気が入った日の朝によく見られる。

 その時、私を含めた実験班は「ダイヤモンドダストは気温が氷点下15℃以下で湿度60%以上という条件の時発生する」という仮説を立て、実験を始めた。実験は一定の湿度条件の中で気温を変えるという方法で行い、同じ条件下では、より結果に確証が持てるように2回行った。インターネットには氷点下15℃前後からダイヤモンドダストは見え始めると書いてあったため、その気温を中心に0℃から氷点下30℃まで変えて実験を行った。やはり湿度が60%で気温が氷点下15℃以下という条件下では、同湿度で気温が氷点下15℃より高い気温のときよりも成功率が高くなった。しかし、2回の同じ条件下の実験で一方が成功、一方が失敗という結果となったケースがいくつも出てしまった。我々の仮説は「氷点下15℃以下で湿度60%の時に発生する」というものであったので、再び成功すると考えて数回、繰り返して実験したが結果は失敗だった。

 その時は理由がわからないまま期限が来てしまった。しかし、今は、仮説にとらわれていたためにこのような結果になったと考えている。なぜなら、一方の成功したと思われたダイヤモンドダストの輝きは、前回成功した実験で発生したダイヤモンドダストの名残だった可能性があるからだ。もし、仮説にとらわれていなければ、もっと正確に結果が出せていただろう。

 このように、仮説にとらわれてしまうと結果が異なってしまう可能性がある。従って、実験を正確に行い、結果のみに注目することが、実験を行う上で重要であると私は思う。

※作品のコピー・無断転載を禁止します

講評(講師:木谷紗知子)

国語専科教室において、文章を読むことは、世界を読む、そのための練習として行う。

Sくんが福岡伸一のエッセイを読んで綴ったこの意見文は、世界を読むための方法として教室で生徒が学んでいるクリティカルリーデングを真摯に行った、一つの例である。

福岡伸一のエッセイを読んだSくんは自分の部活での経験としっかりと照らし合わせて意見文を書いた。文章をただ読むのと、自分の経験と照らしながら、あるいは論証を分析しながら、つっこみを入れつつクリティカルに読むのは違う。後者の読みを続けていった者の読みの技術は的確になり、内面は、次第に豊穣になってゆく。

そして、文章を書くこと。ただ、くりかえし書くだけでは質の良いものになってはいかない。文章はその人間がどれだけ考えているかを明らかにするからだ。しかし、現代の日本は子どもたちの考えるという態度をはぐくむ環境とは言い難い。

そのなかで国語専科教室はテーマを定めた読書や、哲学教室など、さまざまなアプローチで「考える」人間を育てる努力を積み重ねている。Sくんは中学生だった一昨年、動物園の存在意義についてのディベートに参加した。普段は寡黙なSくんであるが、「動物園は廃止するべきだ」という立場で高校生に対し堂々と意見を述べた。昨年は、日曜午後に行われている工藤の哲学講義に姿を見せた。

現在の彼の読書のテーマは「文学」である。忙しい中なんとか時間を作り、こちらの薦める十数冊の候補の中から彼自身が選んだ一冊を毎週必ず読んでくる。六月は、カフカの『変身』、三島の『金閣寺』、南木佳士の『医学生』などを読了した。

授業ではときに短歌を作ることもある。この冬にSくんが詠んだ短歌を記し、講評の結びとしたい。

ある朝の東京タワーを見上げつつ また一日の覚悟を決める      S

 

 

 



更新情報

更新情報
読書探偵作文コンクール2017/中高生部門結果発表
読書探偵作文コンクール2017の中高生部門の結果が発表されました。 中高生部門では当教室に通う野上さんが優秀賞を受賞しました。 詳細は下記の公式サイトをご覧ください。 読書探偵作文コンクール 中高生部門 公式サイト Ch ...続きを読む »
更新情報
読書探偵作文コンクール2017/小学生部門結果発表
読書探偵作文コンクール2017の小学生部門の結果が発表されました。 小学生部門では最優秀賞、優秀賞等計8名の内、当教室の生徒さん4名(最優秀賞2名、優秀賞2名)が受賞しました。 詳細は下記の公式サイトをご覧ください。 読 ...続きを読む »
お知らせ
夏期休暇のお知らせ
当教室では8月5日(土)から8月17日(木)までを夏期休暇とさせていただいております。この期間中、授業はございません。教室へのメール等によるお問い合わせにつきましては、8月18日(木)以降順次お返事をさせていただきます。 ...続きを読む »
Copyright © 工藤順一 国語専科教室 2017 | base design criated by Ani World.