「プラトンとヒュームの比較作文 」(Nさん・中学3年生)

 

【プラトンとヒュームの比較作文 】(Nさん・中3)

 

 ヨースタイン・ゴルテルは『ソフィーの世界』という本で様々な哲学者の考え方をわかりやすく解説しています。この本の中で描写されているプラトンとヒュームの考え方を比較してその違いを説明したいと思います。

 プラトンの哲学の研究テーマは、永遠で不変なものと、それと対極にある流れ去るものとの関係にありました。彼は感覚世界の背後に本当の世界があると考えました。私たちが自然の中で出会う様々な現象の原型を永遠で不変であるものととらえ、プラトンはそれをイデアと名付けました。

 彼は感覚世界に属するものを「流れ去る」存在として認識しました。私たちはこうした変化し続けるものについては確かな知を得ることはできないと考えました。彼にとって人間が確かな知を持てるのは、理性で捉えることができるものについてだけなのです。では、なぜ理性を働かせなければ確かな知を手に入れられるのでしょうか。その理由は理性が感情とは正反対のものだからです。知覚するものや感受されるものについては人間はあいまいな意見しか持てませんが、人間の理性は永遠であり普遍的なものであるとプラトンは考えたのです。

 したがって感覚世界とは対照的な「イデア界」においては、理性を働かせれば確かな知を得ることができるのです。プラトンは、私たちが自然の中で出会う様々な現象の原型を永遠で不変なものと考えました。

 一方、経験主義者であるヒュームは、魂の不死や神の存在を人間の理性で証明しようとするのは合理主義者のはったりと考えました。ヒュームは奇跡とは自然法則に反することだと捉えていましたが、同時に人間には自然法則を直接経験したと主張することもできないと考えました。例えば、人間は石が地面に落ちることを何度も経験したことがあります。石は重力の法則で落下しますが、私たちはその法則そのものを直接経験したことがありません。人間は次々に起こる現象に慣れることで、石を投げればまた同じことが起きると予測するようになります。私たちが「不変の法則」と呼んでいるような観念はそんなふうに断片的な経験の積み重ねによってできあがっていくのです。よって、自然法則は理性によって推論することで明らかになるわけではないとヒュームは考えたのです。

 彼は倫理と道徳についても合理主義者の考えに反対しています。多くの哲学者が人間には正と不正を区別する力が宿っていると信じていました。しかし、ヒュームは、理性が善悪の基準を決めるのではなく、私たちの感情が大きくかかわっていると考えました。他人に対する親切な行いも人間の感情が影響しているために理性で測ることができないというのがヒュームの考え方です。

 プラトンは理性を重視し、ヒュームは経験や感情を重視しました。私は感情が理性より劣っているとか優劣の問題ではなく、理性も感情もどちらも人間として大切なものだと思います。ヒュームはプラトンと対立した意見を持っていましたが、理性を働かせることで科学や数学において私たちは知識を得ることができます。人間にとって理性とはやはりとても大切なものです。

 私はプラトンの良いところは、理性で物事を追究できる限界まで考え続けた姿勢にあると思います。彼が考え出したイデアというものが、私たち人間に備わっているのかどうかはわかりませんが、その思想が後世の哲学者達に少なからぬ影響を与えたことは間違いないでしょう。私がプラトンの意見で賛同できない点は、感覚が語りかけることよりも理性が語ることの方が信頼がおけるとしたところです。確かに理性が判断したことはみんなに共通する普遍的なことかもしれません。(例・三角形の内角の和は永遠に180度です)しかし、だからといって感性で感じ取ったものが理性よりも劣っているとは私には思えないのです。小説や詩、音楽など私たちの世界には感覚で語られたものが多く存在していますが、そこで覚えた感動も理性で判断したことより劣っているということになるのでしょうか。

 私はこの点においては、ヒュームに賛成です。ヒュームは、私たちには共感する能力があり、責任ある行動は幸不幸に対する感情の確かさにかかわっていると考えました。

 理性と感情は単純に切り離せることではなく、理性に偏りすぎても感情に頼りすぎてもいけないのではないでしょうか。

※作品のコピー・無断転載を禁止します

講評(講師:伊藤雄二郎

 Nさんの事は小学4年生の頃から見ています。物語が大好きで週に1~2冊は確実に読んでいました。当初は日本の作家では富安陽子さん、岡田淳さんや宗田理さんが大好きでした。海外の作品ではドリトル先生やナルニア国物語のシリーズなどを夢中になって読んでいました。中学生になってからは、瀬尾まいこさんや森絵都さんがお気に入りの作家になりました。

 中学生になり教室にある様々なジャンルの物語を読む過程で次第に薦める本に困るようになってきました。中学生2年生頃からなんとか理論的な方面にも興味を向けてもらおうとしていたのですが、中学生向けに書かれた理論書だととっつきにくいのか、なかなか興味を持ってもらえません。

 そんな折、高校生になってから薦めようと思っていた『ソフィーの世界』を薦めたところ熱中して、何度も繰り返し読むほどでした。『ソフィーの世界』は難解に思われがちな哲学の世界を物語の形式でわかりやすく解き明かしてくれます。この本を書いたゴルテルの『カード・ミステリー』を読んでいたことも『ソフィーの世界』にすんなり入り込めるきっかけになったかもしれません。

 あの分厚い本が付箋だらけになるほど、読み込む中で彼女の理論的な方面に対する関心が飛躍的に高まりました。比較作文のポイントは二つ以上のものの違いをきちんと書きわけることにあります。Nさんの比較作文ではプラトンとヒュームの考え方の違いが、わかりやすく書き分けられていると思います。またプラトンとヒュームの考え方に対して賛同できるところと、そうでないところがきちんと述べられています。異なる考え方の違いを比較して考える面白さに気づいたNさんは、次にさらに新しい比較作文にチャレンジする企画を練っているところです。

 

 

 

 



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