シカゴへの旅 (Aさん・インター高1)

本文

『シカゴへの旅』
インター高1・Aさん

今年の夏のシカゴへの旅で、私はたくさんの優秀な人と出会い、何事にも積極的に参加することの大切さを学んだ。そして、将来について、改めて深く考える契機になった。

私が参加したのは、医学に興味がある高校生のためのプログラムだ。SATというアメリカの大学入試用のテストで点が良かった高校生がプログラムに招待される仕組みになっている。

参加中は親元を離れ、全員シカゴにある大学のドミトリーでの生活を送る。自分の食事や洗濯物の管理をしなくてはならないが、友達と夜の11時半まで一緒にいて、それぞれの学校生活のことなどを話していられるのはとても楽しい。私は、寮生活で、自立することだけでなく重要なチームワークも学べた。例えば、シャワーを浴びる順番をそれを共用する他の四人の女の子たちと決めたり、洗濯するときに必要な洗剤を貸しあったりした。また、グループの全体責任として、自分のパートナーが授業に遅れていたら、電話で大丈夫か確認したりもした。

このサマープログラムでできた友達の中で最も仲良くなれたのはHだ。コロラドに住む、16歳のヘーゼルナッツ色の目をした女の子。彼女はとても優秀で、コロラドのハイスクールにいる600人の10年生の中で一番成績が良い。高校卒業まで2年もあるのに、すでに、卒業式でバレディクトリアンになってくれないかと学校側から頼まれている。バレディクトリアンとは、学年で最も平均点の高い人で、卒業式で学年を代表して、卒業することへの思いや学校への感謝を15分くらいのスピーチで皆に伝える役割を果たす。

彼女は何でもたやすくできてしまう。高校生の間に優秀な人が取る難しい大学レベルのAPのコースで、10年生でありながら高得点を取ってしまうほどだ。Hは水泳も得意で、家の近くのプールのライフガードや、小さい子に泳ぎを教えるコーチをしていて、体はわりとがっしりしている。

私とHは、プログラムの初日、他の人より三時間も早くドミトリーに着いてしまい、プログラムが始まる前にもうすでに友達になっていた。Hと、ドミトリーで退屈していた他の二人の女の子と大学の周りを散歩した。

ラッキーなことに、八つあるグループの中で私とHは同じグループになれて、いつも一緒にバスに乗ったり、ご飯を食べたりした。Hは私に、アメリカのハイスクールであるプロムというダンス・パーティの話をしてくれたり、Hが好きなアイシ―というスムージーのような飲み物を紹介してくれたりした。彼女は自分のことは全然自慢しないが、私が何か質問すると勉強のことでもアメリカ生活のことでも何でも答えてくれるので、Hと話しているのが一番楽しかった。

私はHや他の子と話をしていて、自分ももっとあらゆることに積極的に参加しようという気持ちになった。スポーツやボランティアなどもやらなくてはならないと考えるようになった。

医者になるためには、何でもできる器用さと万能さが重要だ。このプログラムでは、病院に行って牛の目や羊の心臓を解剖したり、豚の足を縫ったりした。私は手に力が入り過ぎたせいか、針が豚の足の皮膚の奥の方に刺さって曲がってしまった。しかし、Hは私の隣で、前にやったことがあるかのように上手に縫えていた。

このように、自分が苦労することが彼女には簡単にできてしまうので、私は少しやる気を失うこともあった。大学でHのような人と授業を受けていくのは無理のように思えた。

やがて、私は自分がほんとうに医者になりたいのかもわからなくなってしまった。アメリカの医者の体験談を大きなレクチャーホールで聴いたり、ランチを食べながら少人数で聴いたりして、アメリカで医者になる大変さを実感した。30時間寝ないで耐える日々や、気難しい患者さんに対応する辛さなどを教えてくれた。そんな苦しい生活を送ってまで、ほんとうに私は医者になりたいのだろうか。

このプログラムに参加した子たちの中でも私のように悩んでいる人は他にもいた。意外にも、優秀なHもそのひとりだった。Hは漠然と医者になりたいという願望はあったが、何科とかは全然決まっていなかった。

プログラムから帰ってきて一週間くらい、私はぼーっとして、自分が何をしたいのかを考えていた。

このシカゴへの旅で、私は一廻り成長できたように感じている。いろいろな所から来た人のそれぞれが持つストーリーを聴くことで、前よりも世界のことを知ることができたように思える。日本にずっといたら決して出会えなかったような人と出会える貴重な体験だった。皆が積極的にさまざまな活動に参加しているので、私も頑張らなければいけないという気持ちが湧いてきた。

※作品のコピー・無断転載を禁止します

講評 木谷紗知子

ミシガン湖の近くのアメリカの大学でのサマープログラム。
アメリカ全土や世界中から集まった「医者になろうかな」と考えている高校生の一夏。

Aさんの「シカゴへの旅」をわたしはアメリカの青春映画を観るように楽しく読みました。Hさんとの出会いもまた特別です。
「人が他者の中に見つける長所は、その人がすでに持っているか、あるいはこれから持つことができるものである」というのを何かの本で読んだことがあります。
AさんはHさんと出会うべくして出会い、そして、さらに成長していきます。

世界に出ていく日本の若者には、日本語もまた完璧に書きこなしてもらいたいと思います。
Aさんはよく書ける優秀なインター生ですが、
「日本語としては不自然!」
「さらっと終りにしないでもっと書きこんで!」
毎週、さらなる高みを目指して、読んで、書いていただいています。

「シカゴへの旅」はAさんが書いたままを発表していますが、例えば、大学に早く着き過ぎてしまった女の子四人がキャンパスを散歩するくだり。 Aさんの目に映った木の葉のそよぎ、湖面のきらめきなどが描かれていれば、一層鮮烈に、読む人にその場面を届けられると思います。



ハイレベルクラス

ハイレベルクラス
模擬投票の結果報告
国語専科教室では、「模擬投票」として主に中学生以上の生徒に今回の衆議院選挙に投票してもらいました。具体的には以下の手順で投票してもらいました。 『中学生からの対話する哲学教室』の90~91ページを読んで「無知のヴェール」 ...続きを読む »
ハイレベルクラス
シカゴへの旅 (Aさん・インター高1)
本文 『シカゴへの旅』 インター高1・Aさん 今年の夏のシカゴへの旅で、私はたくさんの優秀な人と出会い、何事にも積極的に参加することの大切さを学んだ。そして、将来について、改めて深く考える契機になった。 私が参加したのは ...続きを読む »
510F1J23QML._SL500_AA300_
秋の読書探偵最優秀作品賞(中学生の部)「オリエント急行殺人事件」(中1・K君)
2011年「秋の読書探偵 作文コンクール」(主催:翻訳ミステリー大賞シンジケート)にて、教室に通う中1・K君の書いた「オリエント急行殺人事件」が、見事最優秀賞に選ばれました(コンクール中学生の部 応募総数17作、うち最優 ...続きを読む »
Copyright © 工藤順一 国語専科教室 2017 | base design criated by Ani World.