弥勒玲美亜:本のブログ 『困ってるひと』(大野更紗著、ポプラ社)

困ってるひと

大野更紗著
困ってるひと
ポプラ社

 

 

弥勒玲美亜

この本は、1984年生まれの大野さんが大学院生の頃、ビルマ(ミャンマー)難民のためにNGOで活動している最中に、自己免疫疾患系の難病を発症してしまい、現在も闘病生活を送っているという実体験を綴ったものです。
といっても、これは、たとえばメディアが特集しそうな“健気に頑張る前向きな障碍者”というステレオタイプ化された感動物語として消化されるだけの本ではありません。勿論、そのように読む人もいるし、紹介されてもいますが、重要なのは、彼女が、闘病によって逼迫するのは患者本人の心身だけではなく、人間関係や経済でもあると、しっかり書いていることです。そして、そのような状況に障碍者を追い込んでしまう社会制度への批判もしています。
この本を読んで欲しい理由は二つあります。まず一つ目は、「灯台下暗し」の意味がよく分かるからです。というのも、著者は当初、「難民」を巡る<社会問題に関心を抱いて活動していたわけですが、偶然にも自分自身が「難病」を抱えることによって、あまりに身近で見えていなかった困難を、まさに身体で知っていく過程が描かれており、そうした身体的な経験から再び言葉を紡ぎ出していく姿が、とても興味深いのです。つまり、遠くの「難」から近くの「難」へと気づかせたのは、他ならぬ自分自身の身体だったという点が、この本の魅力なのです。そして、二つ目の理由は、文体が笑えるからです。なぜ、難病患者の体験談を読んでいるにも関わらず、本を抱えて笑ってしまえるのでしょう。ここで、著者の不思議な言葉使いのセンスを、「今時の若者らしい言葉の乱れ」と認識してしまうのは勿体ないかもしれません。なぜなら、想像を絶する苦痛について書いているにも関わらず、彼女の気負わない言葉使いが、読み手をめげさせないよう勇気づけているからです。
以上の理由から、私は小学校高学年から中高生の生徒向けの本として、この本を推します。


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