花房太一:本のブログ 『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎著、講談社)

暇と退屈の倫理学

國分功一郎著
講談社

 

 

 

花房太一

生徒によく「何が好きなの?」と尋ねることがあります。すると、たいていの子どもは「うーん」と黙ってしまいます。

—ゲームとかは?

—DSは持ってるけど・・・。

−テレビは?

−朝は見るけど・・・。

こんな調子で、彼らが何を好きなのかをなかなか聞き出すことができません。それでも、みんな忙しそうなのです。たいていは習い事をたくさんしているからです。しかし、その習い事が好きなのかと尋ねてみても、上記のようなやりとりが続くだけです。こんなやりとりをする度に、子どもたちはとても暇なのだな、と思うのです。

小学校高学年になると、これに受験塾が加わる子どもが多くなります。しかし、当然受験塾が好きな子ばかりではありません。ところが、受験塾をやめたとしても特にやりたいこともない。だから、退屈してしまうのです。そして、退屈な日々を過ごすことになるのも嫌だから、受験塾に行って暇つぶし、退屈しのぎをすることになるのです。

私は子どもたちの生活を批判したいのではありません。実は、私たち大人だって、結局は暇つぶし、退屈しのぎをしているに過ぎないのではないでしょうか。朝起きて仕事に行く、ジムに寄ってエクササイズ、お休みはゴルフにショッピング、などなど。

こんな疑問について真正面から哲学的に考察した本が、國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』です。國分さんは哲学研究者です。哲学と言うと小難しそうに聞こえます。しかし、この本は國分さん特有のべらんめえ口調(文体)に合わせて、縦横無尽にたくさんの本を引用することで、ぐいぐいと読者を引き込みます。

中学生ではこの本は少し難しいかもしれません。しかし、高校生なら十分に読めるように書かれてあります。興味があれば、ぐっと背伸びをして國分功一郎さんの本格的な哲学書『スピノザの方法』に挑戦してみるのもよいと思います。

ところで、教室では新しく「哲学教室」を開講しました。この「哲学教室」が、暇と退屈を持て余した私たちの、もっとも贅沢な時間であることを願っています。



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