ワークショップ報告「秋を探しにいこう」
ワークショップ概要(講師:黒木里美)
りんご・チョコレート・ひまわり・・・プライマリークラスでは、様々な食べ物・植物を五感を使って観察し、感じたことを言葉で表現し、文章へと立 ち上げていきます。今回の「秋をさがそう」というワークショップは、観察作文の取り組みの応用編として「秋」という抽象的な課題を五感で感じ取ってもらお うという目的で企画されました。
五感を使った観察作文を学んできた生徒たちは、文字だけでなく現実を「読む力」を十分に持っています。生徒たちの目は、どんなに小さな変化も見逃 すことはありません。草花の色や匂い、空の色、人々の様子、生徒達は宝物を見つけたように目を輝かせ、新しい出会いを弾むような瑞々しい言葉で語りかけて くれます。
今回は、一人一台ずつインスタントカメラを持ってでかけました。カメラで写真をとることで、面白いものや美しいものを見ようとする意識がより高ま ります。感性の赴くままにシャッターを切り続けた写真には、どれも臨場感溢れる子どもの世界が映しだされていました。そして後日、出来上がった写真を見 て、思ってもみなかった風景が映っていることに、また新たな驚きや感動が生まれました。
作文にまとめる際には「秋」というものが具体的にどのような物から感じられたのかを、写真から説明してもらいました。そして、なぜその物に秋を感 じるのか、また美しいと感じるのか、理由も丁寧に立ち上げ、しっかりと書き上げるよう促しました。こうした具体的な風景を自分の言葉で語ることができるこ とは、スタンダードクラスに進んだ際に取り組む『小さな町の風景』(杉みき子著)の物語要約課題を行う際に、とても有意義なことだと思われます。
自分の感じたことを素直な言葉で表現できる楽しさ、他者に共感してもらえた時の喜び――言葉と身体が一体となった経験こそが、プライマリークラスでの学びの醍醐味となっています。
生徒作品
十一月二十一日、わたしは、秋のしぜんをさがすために、みんなとガーデンプレイスに行きました。
教室から外へ出て、秋はきれいだなと思いました。そして、おうど色と、グレーと、みどり色のねこじゃらしが、こちょこちょして気持ちよかったです。
町の人々を見ていると、木の葉をあつめている人がいました。しぜんの中で見つけた秋は、木がかれていて、木の葉がおちていたことです。まるで、ちょうの ようにまいおりていました。その葉の色は、うすちゃ色でした。見つけた中ですきなところを思い出してみました。それはきものをきているすがたの女の人がき れいだったことです。
秋のしゃしんの中で一番おどろいたしゃしんは、しらないうちにとってしまったしゃしんです。それは黄色ばっかりでなにがうつっているかわからない、へんなしゃしんでした。つぎに、一番きれいにうつっていたしゃしんは、小さいピンクの花のしゃしんでした。しかし、花だんのレンガのはしっこがいっぱいさびているのがうつってしまいました。さいごに一番楽しそうにうつっていたしゃしんは、いろいろなしゅるいの花がうつっているしゃしんです。その花だんのまん中には、あながあいていました。そして花がわになってかこんでいました。だから楽しそうに見えました。
講評(講師:堤 壽音)
カメラを持ち、先頭を切って秋さがしをしていたRさんは、風の冷たさをものともせずに、楽しんで町や人や風景に向かっていきました。そうして味わったこ とを教室へ持ち帰り、書きあげた作文は、読んでいる私たちまで楽しい気持ちになります。人を楽しませる文章を書くには、まず自分自身が楽しんでいなけれ ば、本当に生命力を持った文章にはならない。そんなことを伝えてくれる作文です。
先日、ぼくは、秋をさがしにカメラを持って出かけました。
まず、一番上手に秋を写した写真は、クリスマスツリーが写っている写真です。そのツリーは、ふくろうの毛のような丸いかざりや、金色の、まだむいていないなしのようなかざりがたくさんついていました。このなしのようなかざりが、秋らしいと思いました。そして、このツリーには、赤色のかざりなどたくさんのかざりも、たくさんついていました。
次に、一番おどろいた写真は、はちみつ入りのジンジャーエールが写っている写真です。なぜなら、ぼくは、冷たいはちみつ入りのジンジャーエールが夏の飲み物だと思っていたので、寒い秋のこの時期に、どうして売っているのかふしぎに思ったからです。
そして、一番きおくに残っている写真は、アイスクリーム屋の秋のスイーツが写っている写真です。その写真を見ていると、ぼくは、この秋のスイーツを食べたくなります。
一番きれいに写っている写真は、とても大きなクリスマスツリーを写した写真です。これは、恵比寿ガーデンプレイスにあったツリーです。このツリーには、赤色のかざりや白色、金色のかざりなどがたくさんかざってあり、ぼくの家でもかざってみたいと思いました。
さい後に、一番楽しそうな写真は、お花屋さんの前でとった写真です。じつは、写真には写ってはいませんが、お店には雪だるまのおもちゃがかざってあったのです。そのだるまの目は丸くて、かわいくて、手を動かしておどっ ていたのです。それを見ていると、自分もおどりたくなりました。この写真を見ると、雪だるまが楽しそうにおどっている様子をぼくは思い出すのです。
講評(講師:設楽 舞)
この日、恵比寿の街はすでにクリスマスの色に染まっていました。クリスマスツリーから果たして秋を感じられるのか……、そんな講師の心配をよそに、O君 は彼なりの視点で秋を感じ、きちんとそれを説明してくれました。自分が感じたことを自分ではない誰かに伝えていこうとするたくましさ、この作文には、彼が 頼もしく成長している姿が、顔を出しているように思えます。
せんじつ、わたしは、カメラをもってあきをさがしにでかけました。
一ばんじょうずに秋をうつしたしゃしんは、ラーメンやの前の、こうようしている木をうつしたしゃしんです。そのこうようしているはは、まるで、おじいちゃんおばあちゃんみたいでした。つぎに、一ばんきれいにうつっているしゃしんは、クリスマスツリーと青空がうつっているしゃしんです。このツリーは大きくて、きんいろと、赤と白のオーナメントがかざってあり、うつくしかったです。そして、わたしは、このクリスマスツリーのまわりを、 こくせん(国語専科教室)のみんなといっしょに丸になってならび、うたったりおどったりしたかったです。そして、一ばん楽しそうにうつっているしゃしんは、レストランの入り口をうつしたしゃしんです。なぜなら、なかのようすがみえたからです。レストランの中はたのしそうで、入り口のクリスマスツリーもサンタさんのかざりもかわいかったです。
講評(講師:設楽 舞)
現像された写真を前にして、Nさんは楽しそうに説明をしてくれました。作文では、風景に含まれているさまざまな物語に気づき、そこから生まれた想いを丁寧に表現してくれました。落ち葉やツリーを見る彼女のやさしいまなざしが読む側にも伝わってきます。
十一月二十一日、ぼくはカメラをもって、えびすの町へ秋をさがしにいきました。
教室から外へ出ると、すこしさむかったです。まず、町を見てみつけた秋は、大きいきんかんみたいなくだものです。つぎに見つけた秋は、むらさきの木のみと、きんかんと、赤い小さな木のみです。
一番じょうずに秋がうつったしゃしんは、木についている赤いはっぱのしゃしんです。つぎに、一番きれいにうつっているしゃしんは、ピンク色の大きな花びらのしゃしんです。そして、おどろいたしゃしんは、先生の黒いマフラーのしゃしんです。どうしておどろいたのかというと、顔がうつっていなかったからです。さらに、一番楽しそうにうつっているしゃしんは、ピンクとこいピンク色の花と、みどり色のはっぱのしゃしんです。また、一番きおくにのこっているしゃしんは、キャベツのような、大きいくだもののしゃしんです。
さいごに、三まいのおきにいりのしゃしんをしょうかいします。まず、すこしぼやけてしまったけれど、ピンク色と黄色と赤色の花のしゃしんです。そして、ピンク色の花とこいみどり色のはっぱのしゃしんです。さらにもう一まいのお気に入りは、みかんのような黄色いくだもののしゃしんです。
講評(講師:堤 壽音)
教室から灰色の雲がひろがる空の下へ出ると、冷たくなりはじめた秋の風が肌にあたり、思わず「寒い!」と言ってしまうような日でした。そんな中、Kくん が触れた風景は、とてもカラフルでにぎやかなものだったようです。色彩にあふれ、あたたかく楽しい町の風景を持ち帰り、ノートに書き残しています。また、 その文章からは、K君が近づきながら見た、カメラの小さな覗き穴の向こう側の景色が伝わってきます。
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