読書感想文『ブンナよ、木からおりてこい』(小5・Nさん)
(『ブンナよ、木からおりてこい』読書感想文)
5年 Nさん
私は死にたくない。ずっと生きていたい。この本を読んでつくづく思った。
私の読んだ本は、水上勉さんが書いた『ブンナよ、木からおりてこい』だ。この本は、生きているもの全て死ぬべき定めにあることを説いている。
主人公は気に登るのが得意なカエルのブンナだ。ブンナが椎の木に登ると、土のある広場があった。土の中にもぐり、木の上の様子をうかがうと、そこ は鳶のエサの貯蔵地だった。鳶にさらわれ、木のてっぺんに連れてこられた動物達は、半死半生の目にあわされ、やがて鳶の餌食になるまでのわずかな時間をこ こで過ごす。その間にそれぞれの個性をむき出しにし、後悔したり、ざんげしたり、自分だけが生き延びようとたくらんだり、生きる希望を見出そうとしたかと 思うと一切をあきらめたり、時には生死を忘れて自慢する。
私は、この世に生きている全ての生き物は必ず死んでしまうのだから、自分だけ生き延びて幸福になろうなどという考えをもつのは、さみしいことだと思った。なぜなら、仲間がいないと生きていけないからだ。
動物達は、元気を出して少しでも長く生きようとする。中には、強いことを言う者もいれば、ずるいことを言う者、やさしいことを言う者もいる。時に は、けんかをする者もいる。しかし、「もっと生きていたい。」という心はみんな同じなのだ。誰もが順番にこの世を去っていき、代わりに新たな命が生まれて くる。命のバトン。それは、自分の命が次の命に引き継がれていくことだと私は思う。
人間はいろいろなものを殺す。蚊などはもちろん、食べるのに必要な肉や魚、野菜だってそうだ。どの生き物も死にたくないはずだ。しかし私達は、自 分が生きていくためにそれを当たり前のように殺している。たった一つのかけがえのない命なのに。だからこそ、みんなにもらった命を大切にしていかなければ いけないと私は思う。
今までずっと疑問だったことがある。それは「生まれる」とはどういうことなのか。そして、「死ぬ」とはどういうことなのか。この本を読んで、その 答えが少しわかった気がする。それは、「何か意味があるから」だと思う。私達は「役目があるから」生まれてきた。その「小さな役目を果たした時」に死ぬの だ。つまり、「生きていることに、意味がない、役目がないというものは一つもない。」ということだ。私にはどんな役目があって生まれてきたのかは、まだ はっきりとわからないが、それぞれにあたえられた時間を有効に使いたいと思う。そして、私のする小さなことが、何かに役立ってほしい。私はこの本を読ん で、命の大切さ、素晴らしさを学んだ。ブンナよ、ありがとう。私に命をあたえてくれた父母に感謝し、一秒一秒を大切に、自分に自信をもって生きていきま す。
講評(講師:中野恵里香)
読書感想文を書く際、何の本についてどんなことを書くか、考えあぐねて鉛筆を持つ手が止まってしまう子どもは少なくありません。そんな中、Nさんは「感動しちゃった!」と言って一冊の本を私に紹介してくれました。水上勉さんの書いた『ブンナよ、木からおりてこい』です。
この本を読んだ彼女は、「なぜわたしたちは生まれ、死ぬのか」という問いを自ら見出し、自分自身の答えを出しています。生きていると、一瞬一瞬さ まざまなことが起こります。無秩序に広がる事象をどのように受け止め、意味づけ、自分の物語を作っていくかによって人生は大きく変わっていくでしょう。
物事を真摯に受け止め、自信をもって生きていこうとするNさんの姿が、この作文を読むと目に浮かびます。
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