おかあさん(小2・Hさん)
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小2・Hさん
わたしのおかあさんは、見るとかわいいです。さわると、やわらかいです。よく言うことは、「かたづけなさい」です。おかあさんは、けっこんしきにいくときにいいにおいがします。おかあさんのやさしいところがすきです。おかあさんとプールにいくのが大すきです。
講評(講師:木谷紗知子)
Hさんは、ことばが内側にすでにはちきれんばかりに備わっています。それで、母の日の数日後、私が「お母さんのこと書こうか」と言うと、すぐに書きはじめました。
今回は、プライマリー用の観察作文シート『観察名人』を使いました。いつも身近にいらっしゃるお母様についてなので、目の前に観察対象がなくてもだいじょうぶだろうと考えました。その通りでした。
3月にヒヤシンスの観察作文に取り組んだ時、Hさんは文章よりも絵を描く方にいっしょうけんめいでした。この、絵を描くのに懸命だというのもすばらしい のです。なぜなら、絵も文も同じように表現のツールだからです。世界をこのようにとらえているということの発露だからです。
ですから、絵を描きたがっている子どもに文章を強いないでください。その時に描きたい絵を描きたいだけ描かせてあげてください。やがて、その子ども自身 が、絵よりも文章の方が表現しやすいと感じれば、Hさんのようにことばがあふれ出してきます。今回Hさんはどんどん文章を書き始めたので、シートに絵は描 かないで、そのまま原稿用紙の作文に移りました。Hさんがシート記入をはじめてから作文を書きあげるまで、およそ十五分でした。
どのような子どもが描きたい、書きたいと思うのでしょうか。それはしっかりと生きている子どもです。いきいきと楽しく世界とかかわっている子どもです。
いきいきと世界に関わる力はどの子も元々持って生まれてきています。それをただ、そのまま受け入れてあげればいいのです。子どもが伸び伸びと自分自身で いられるような生活をサポートしていただければと思います。それには、親も子も、日常生活を楽しんで暮らすのが一番です。できるだけ好きなことをしなが ら、それぞれのご家庭の条件の下で可能な限りゆったりと過ごす。それこそが、現代の風潮の中で、最も難しいことだとは承知しています。けれども、この教室 を見つけてくださったご家庭であれば、きっとできるのではないかと思います。
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