読書感想文おたすけシート

多くの学校では、毎年夏休みの宿題として読書感想文が出されます。当教室でも夏期講習に読書感想文指導の講座を開きますが、ここでは、そこで実際に使われる「感想文おたすけシート」というツールをご紹介します。

解説

読書感想文の問題点

多くの生徒が読書感想文に対して苦手意識を持っています。中には、「感想文があるために読書が嫌いになってしまった」という生徒もいるほどです。 そのもっとも大きな理由は、「読書感想文の書き方を、具体的かつ明確に教えていない」ということです。普段長い文章を書くことに慣れていない生徒が、一冊 の本を読んで感じたことを、説明の順番にも注意しながら原稿用紙にまとめるのは至難の業です。それにも関わらず、「思ったことを自由に書きなさい」などと いった漠然とした教示をするだけでは、生徒が途方に暮れるのも当然といえます。さらに、読書感想文は「誰に向けて」、「何を伝えるための」文章なのかとい う目的自体も曖昧であるため、残念ながら効果的な指導になっているとは言い難い場合がほとんどです。

「感想文おたすけシート」とは

そこで、読書感想文を、「論理的で明快な文章を作成するためのトレーニング」として位置づけるべきではないかというのが、国語専科教室の考えで す。ここでご紹介する「感想文おたすけシート」は、それを実現するためのツールとして作られました。この「感想文おたすけシート」とは、簡単にいえば、感 想文を書くために必要な部品=メモが書き込めるシートです。シートは「はじめに」、「本のしょうかい」、「なぜこの本をえらんだか」という3つの項目に分 かれていて、メモを取る感覚でそれぞれの項目を埋め、最後にそれらをつなげれば、短時間で読書感想文を完成させることができます。

記入サンプル

1.「はじめに」……明確な他者の想定

最初の項目には、「誰に向けて」、「何の本を紹介するか」を明確に書きます。これまでの作文指導では曖昧だった、情報を伝える相手を明確に想定す ることによって、「~さんにも伝わるような、分かりやすい文章を書こう」という意識が高まり、また文章を書く目的もはっきりします。

2.「本のしょうかい」……3つのポイントに絞ったストーリーの要約

次の項目には、「本・作者について」の情報と「本のあらすじ」の2つを書きます。前半の「本・作者について」には、本の後書きや作者の紹介ページ などを参考にし、作者の名前や出身地、あるいはその他に自分が知っている情報を書いていきます。後半の「本のあらすじ」には、その本の大まかなストーリー の流れを、3つのポイントに分けて説明していきます。

  1. 「主人公はだれか?」……主人公はどんなキャラクターか。物語の設定
  2. 「どんな出来事が起きたか?」……どのような事件・出来事が起きたか
  3. 「最後に主人公はどうなったか?」……物語のクライマックスで何が起きたか

この3つのポイントは、どの物語にも共通して含まれている構成要素であり、これらをしっかりと説明することができれば、まだ本の内容を知らない人 にも分かりやすく伝えることができます。また、だらだらとあらすじだけが書かれているような、ありがちな感想文になる心配もありません。国語専科教室で も、このアイディアを使った物語の要約練習を、日々行っています。最近では、読書感想文を書く際に、あまりあらすじを書かないようにと推奨されている場合 も多いかと思いますが、本の内容を紹介するにあたって、読む側が最低限知っておかなければならないストーリーの内容は、やはり書く必要があります。

3.「なぜこの本をえらんだか」……「三角ロジック」を使った論理的な説明

最後の項目には、なぜ自分がこの本を紹介するのかという理由と、そう感じた具体的な場面(ページ)を説明していきます。この部分で使っているのは、論理的に物事を考え、自分の意見を表現する際に役立つ、「三角ロジック」 という手法です。三角ロジックは、「主張・自分がもっとも言いたいこと(=クレーム)」、「その根拠(=ワラント)」、「具体例(=データ)」という3つ の要素で成り立っています。何か自分の考えを述べる際に、ただ言いたいことだけを主張しても説得力がなく、単なる放言になってしまいますが、その主張を支 えるような明確な根拠と具体的な事例を述べると、主張は格段に説得力を増します。たとえば図のように、インド民話の『ランパンパン』(評論社)を選んだ3 年生のK君は、その本を選んだ理由として、「にぎやかで面白かったから」と表現し(ワラント)、そう感じた場面として、「最後のページで、クロドリの夫婦 がたくさんの生き物に囲まれて、楽しそうに木の上にとまっているところ」を挙げました(データ)。明確な理由と具体的な場面を述べることで、とても論理的 な説明になっています(シートには、あらかじめ「たとえば~ページがそうです」とありますが、場合によっては、「それは~ページに、次のように書かれてい ます」などのように、多少表現を変えても構いません。具体的な場面の説明がしっかりとできていればいいわけです)。

このような練習は、論理的に自分の考えを構築し、それを他者に向けて的確に表現する力の育成につながります。それは、OECD(経済協力開発機構)のPISA調査で求められているような、国際標準のリテラシーとも共通します。

教育心理学で、「スキャフォールディング(scaffolding)=足場掛け」という考え方があります。これは、熟達者が学習者に向けて、適切 な援助や声掛けなどをすることで必要な足場を固めてやり、徐々に自分の力でできるよう成長をサポートするというものです。読書感想文においても、このおた すけシートのような形で、生徒が自分の力で書けるようになるための、適切な足場掛けをしてやることが重要となります。

読書感想文では、決して言葉の表現や文の構成に凝った「上手い」文章を要求する必要はありません。あくまで、きちんとした書き言葉で他者に明確に 伝わるような、筋道の通った文章を心がけるべきです。書くことに苦手意識を持っている生徒でもそのような文章が書けるようになるための一つの足場掛けとし て、このおたすけシートを使って頂ければ幸いです。

読書感想文おたすけシート ダウンロード

生徒さんの作文例

『ランパンパン』を読んで
荻窪教室・N君(小3)
ラン パン パン―インドみんわ (児童図書館・絵本の部屋)

これからぼくは世田谷区のみなさんに、「ランパンパン」という本をしょうかいします。この話の作者は分かっていません。この話はインドみんわで、マギー・ダフという人がさいわしました。

まず、この本のあらすじをしょうかいします。この本のしゅじんこうは、オスのクロドリです。ある日、クロドリのにょうぼうがよくばりなおうさまに さらわれてしまいました。クロドリは、にょうぼうをたすけるためにたびだちました。さいごにクロドリは、にょうぼうをつれもどして仲間とへいわにくらしま した。

なぜぼくがこの本をえらんだかというと、にぎやかでおもしろかったからです。それはたとえば、いちばんさいごのページに次のように書かれてありま す。このページには、ぶんしょうで「それからずっと幸せにくらしましたとさ」と書かれてあります。そしてその下には、クロドリのふうふがたのしそうに木の 上にとまっている絵がかかれています。そのまわりにはたくさんの生ぶつがいて、とてもにぎやかです。

『アッホ夫婦』を読んで
恵比寿教室・Iさん(小6)
アッホ夫婦 (ロアルド・ダールコレクション 9)

これからわたしは、友達のYさんとHさんに、『アッホ夫婦』という本を紹介します。

この本の作者は、ロアルド・ダールという人です。ロアルド・ダールはイギリスの人で、ほかに『マチルダは小さな大天才』や『チャーリーとチョコ レート工場』という本を書いています。ロアルド・ダールは、戦争のときパイロットとして働いていたそうです。また、彼の書いた本の中で、映画化されたもの もたくさんあります。スタジオジブリの宮崎駿かんとくも、彼の大ファンだそうです。

この本の主人公は、毛むくじゃらのアッホ氏と、みにくい顔のアッホ夫人です。二人はとてもいじわるで、よくいたずらのし合いっこをしています。た とえば、カエルをベッドに入れたり、ミミズスパゲッティを食べさせたりしています。最後の部分で、アッホ氏にいたずらをされたサルや鳥たちは、し返しをす るために、二人の家のゆかにある物を全部天井につけて、アッホ夫婦をさかだちさせるようにしくみました。そして、二人とも「ちぢみ病」という病気にかか り、消えてしまいました。

なぜわたしがこの本を選んだかというと、くだらないいたずらをし合っている夫婦を見るのが面白かったからです。たとえば、二十八から三十二ページ がそうです。これは、アッホ夫人がアッホ氏にミミズスパゲッティを食べさせる場面です。アッホ氏が、カエルをベッドに入れたし返しに、アッホ夫人はスパ ゲッティのめんをミミズに変えて、食べさせてしまいました。この場面を読んで、二人はとてもバカだなと思いましたが、おもしろかったです。

『黒ねこサンゴロウ1 旅のはじまり』を読んで
恵比寿教室・H君(小4)
旅のはじまり (黒ねこサンゴロウ 1)

これからぼくは、Hさんに『黒ねこサンゴロウ1 旅のはじまり』という本をしょうかいします。

作者は竹内文子さんという人です。竹内さんは福岡県の人で、ほかに、『わたしおてつだいねこ』という本を書いています。竹内さんは、ねこがでてくる本をたくさん書いています。

この本の主人公は、サンゴロウという冒険ずきなねこです。サンゴロウはケンという男の子に出会い、山の中やがけっぷちを冒険しました。さいごにサンゴロウは、ケンと別れました。そしてまた、冒険を始めます。

なぜぼくがこの本をえらんだかというと、どきどきはらはらする物語だからです。たとえば、五十ページから百七ページがそうです。このページには、二人が山をこえたりがけをわたったりして、海ねこぞくの船の作り方が描いてある紙を見つける場面が書かれてあります。

※作品のコピー・無断転載を禁止します



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