なぞの器械の観察(3年・T君)

講評(講師:澤口佐弥香)

ある冬の寒い日、たまプラーザ教室に新しい器械が届きました。かたちは丸くクッキーの入った缶のようで、穴ぼこだらけ。一見しただけでは、何に使うのかわかりません。このひとつの器械が今回の作文を書き始めるきっかけとなりました。

人がものを認識してそれが何かを判断するときにもっとも重要なのは、それをよく観察してみることです。Tくんはこの器械が何なのかを探るために、 多くのことを観察しました。見て、嗅いで、触って、聞いて、ぐるりを見て、ひっくり返して、分解して。そして、それを観察した上で、この器械の正体はいっ たい何なのかを推理してくれました。

Tくんは器械を前に、一心不乱に課題に取り組みました。まず分類した情報同士のつながりを考えながら、段落を自分で立てました。それから記憶をた どり、思考のプロセスを組み立て直し、推理の経緯を書いていきました。その様子は、他の先生から「紙と器械と自己との三つ巴の格闘のようだった」と評され るほどでした。

彼の知的好奇心と自立心は、何よりもすばらしい宝です。Tくんは作文とじっくり向き合い、何度も推敲しながら自分自身の力で書き進めていきました。そのような過程も含め、今回の作文を評価したいと思います。

いつも落ち着いた様子のTくんが、瞳をきらきらと輝かせて課題に取り組んでいた姿や、作文と向き合う彼の凛々しい表情が今も忘れられません。みなさんもどのような器械なのか想像しながら、Tくんの創りあげた文章を読んでみてください。

『なぞの器械の観察』

ぼくはなぞの器械を観察した。その器械は白くて丸く、無臭ではないがなんともいえないにおいがした。横にはへんな緑色のスイッチのような形のもの があり、その緑色のものを持ち上げて落とすと「ガン」という音がする。その近くに「Ag+」というマークがあった。器械の上には製品名として 「BONeco」と書いてあり、器械にはコンセントがついていた。

機器の色々な場所には、格子のような穴があり、上だとその格子の長さがちがい、下だと長さは等しい。その格子を一本一本さわると、つるつるともざ らざらともしておらず、格子の一本一本を指のつめでさわっていると、まるでギロのような音が出る。横の穴から奥をのぞくと、クイックルワイパーの先につけ るシートと同じ材質のような水色のものがあった。

上から穴をのぞくと中にプロペラがあり、そのプロペラは黒色で二枚羽だった。プロペラは裏はざらざらしていて、表は少しだけざらざらしていた。器械の上にあるスイッチをONにすると、スイッチの裏に赤い印のようなものが見えて、上の穴からは冷風が出てきた。

プロペラの裏側には「水禁止」のマークがあり、本当にそこに水をかけると感電しそうだ。中のシートは裏にかたい線みたいなものが通っていたので、 意外とかたかった。シートの近くには発泡スチロールがあり、その間にプラスチックの変なものがあった。それを発泡スチロールとぶつからせると、太鼓のよう な音がした。裏の内部に書いてある時計のようなマークは、製造された年と月が記されているようだ。

それでは、この器械はいったい何なんだろうか。まずぼくが気づいたのは、その器械の穴から風が出るということだ。そして、その器械は一月に国語専 科教室にきたので、冬に使う道具だとぼくは推理した。さらに、先生のヒントで水を入れて使うこともわかった。そういえば「水禁止」のマークはプロペラの一 部にしかないので、ほかの部分に水を入れられるということは正しそうだ。水を入れるらしい穴も器械の横の面にあった。

けれども、ぼくは結局それが何かわからなかった。ぼくが考え続けていると、教室の帰り道にお母さんは「あれは加湿器じゃないか」と言った。しか し、ぼくは蒸気がでない加湿器は見たことがなかったので、それは違うのではないかと一瞬思った。だが、それ以外に思いつく器械がない。そして、決め手と なったのは、まだぼくが答えを知らないと知らなかった先生が言った「加湿器……」という言葉だった。

このような経緯から、ぼくはその器械が加湿器だということがわかった。そして、「加湿器」という漢字やその使い方から、その使う目的が空気中の湿度を高め、ウイルスなどの活動を活発にしないことだと考えた。

※作品のコピー・無断転載を禁止します



スタンダードクラス

お知らせ
物語の中の町(Nさん・小5)
「物語の中の町」  (Nさん・小学校5年生)  私は、夏休みに、新潟県の上越市に行った。上越市出身の杉みき子さんが書いた『小さな町の風景』を読み、その町に行ってみたいと思ったからだ。たまたま長野県出身の父と石川県出身の母 ...続きを読む »
illust59
大好きな弟(Yさん・小4)
本文 わたしは弟が好きです。おもしろいから好きです。 たとえば、受けんで、魚を二ひき、つりざおを一こ作るという工作がありました。けれども、弟は、魚を一ぴき、長ぐつを一つ、つりざおを一つ作りました。そして、通りかかった先生 ...続きを読む »
4513720812_c95fb3862f
京都旅行(小5・Rさん)
京都旅行(小5・Rさん) 「あーあ、つまらない京都旅行か・・・・・・」 一緒に京都に行くはずだった友だちが、大阪でノロウィルスにかかって帰ってしまったのです。毎日電話をして、京都旅行の打ち合わせをしていました。私たちが楽 ...続きを読む »
Copyright © 工藤順一 国語専科教室 2017 | base design criated by Ani World.