学問の自由(高3・M君)

講評(講師:工藤順一)

この生徒の場合は、どんどん書いてくるので、とにかく縮めることと、段落の関係を明らかにすることのみに注意を払わせた。

内容的に、この先には当然バイオテクノロジーのような倫理の問題が待ち構えているのだが、それは、それで別の主題とするのがよいだろうとアドバイスをした。

本文

『学問の自由』

学問がどうあるべきかについて考えていきたいと思う。

1…世界を見る

現在、アメリカでおこった自由主義の潮流に従い、日本でも、大学改革が行われ、大学が独立行政法人へと改革された。それに伴い、資金集めのために、研究 は基礎研究よりも、成果のすぐ出る応用研究が重視されるようになった。そのため、日本の大学では、成果の出にくい、つまりお金にならない基礎研究を行うこ とは難しくなっている。

このように、現代では目先の利益を優先して学問が行われている。このことは、学問をする人々に様々な影響を及ぼしている。例えば、学生の選択する 学問に影響が出ている。学生の間でも、所謂「役に立つ」学問が人気で、あまり世間に「役に立っていない」ようにみえる学問は、研究する人が極端に少ない。 彼らが大学卒業後に就職活動をするとき、企業側が求める学問を研究したがることが原因だろう。企業自体が利潤を求める存在なので、企業が求める学問は、利 潤に直結する学問、所謂「役に立つ」学問である。

また、世界を見渡すと、国をあげて学問に投資している国がある。利潤に直結する学問に大量に投資し、学問を国の主要な産業としようとしているので ある。このような国の例として、シンガポールが挙げられる。シンガポールはバイオテクノロジー専用の建物「バイオポリス」を造り上げ、世界各国からトップ クラスの研究者を呼び寄せた。バイオポリスの建設責任者の発言が、現代の潮流を象徴していた。「学問を純粋に追究したいわけではない。そこから得られる経 済的利益を私たちは求めているのだ。」

現代では、金銭的な利潤を第一として研究が進んでいる。このことに違和感を覚えて、学問について書くことにした。

2…学問を見直す

学問には、金銭的な利潤を求めるため、という目的があるが、他にも「人類の幸せのために行われるべきだ」、「好奇心に忠実に学問を進めていくべきだ」と いった、様々な考え方がある。しかし、学問の目的は何であったとしても、結果として人類の役に立ったものは数多い。特定の人々の利益のために開発されたも のが、人類全体の利益となった場合もある。インターネットや無線は、最初は、軍事的目的から開発されたものであったが、戦争が終わってからは、世界中を結 ぶネットワーク、人工衛星の開発へと役立った。好奇心に忠実に従った研究が役立っているものもある。ニュートンは、神のつくる秩序だった世界を目に見える ようにするために、物理法則を発見していったといわれている。その物理法則が、現在の科学のすべての根幹をなしていることは言うまでもない。もちろん、最 初から人類の発展を目的として行われた学問もある。医学は人類の病気を治癒するために生み出され、首尾一貫して人類のために役立ってきている。

3…学問を考える

先の段落を踏まえると、どんな目的であっても、人類の役に立っているものが数多くある。この裏を返せば、人類の役に立ってきた学問は、様々な目的によっ て支えられているということだ。つまり、さまざまな目的の研究が積み重なって、学問が発展し、人類の利益となってきた。特定の人間の利益を求めて研究が進 むこと、好奇心に忠実に研究すること、そして、人類全体の幸福を求めて研究すること、どの一つが妨げられても、学問の発展はアンバランスなものになってし まう。アンバランスになるばかりか、人類にとって不幸にさえなる。

戦時中がいい例である。戦時中は、自国の利益が最優先され、人類のため、好奇心のための学問の多くが排除されることになってしまった。原子力などのエネルギーは大きく進歩した半面、アメリカで原子爆弾が製造され、人類の犠牲も顧みられずに、広島、長崎で使用された。

このようなことならないためにも、どのような目的の学問も、どんな分野の学問も、分け隔てなく行われていくことが不可欠だ。

4…まとめ

学問の目的は、多様であり、ある目的が望ましくて、またある目的は好ましくない、などということはない。大切なのは、学問がどんな目的で行われようと も、どんな分野の研究が行われようとも、自由に研究が出来る環境が作られていくことである。そうすることこそが、人間の幸せに直結する。

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